「整えてもらう」から「自分で立て直す」へ
医療の現場にいると、患者さんからかけられる言葉に、二つの種類があることに気づきます。どちらも自然な言葉です。けれど、その二つの間には、はっきりとした段階の違いがあります。
「直してください」と言う日
体調を崩したり、痛みが出たりしたとき、多くの人がこう言います。「整えてください」「直してください」。これは、とても自然な気持ちです。つらいときは、誰かに委ねたい。専門家の手に、自分をあずけたい。その願いは、弱さではありません。むしろ、助けを求められることは、力のひとつです。
この段階では、主役は「整えてくれる人」のほうにあります。あなたは、整えてもらう側にいます。そして実際、それで楽になることは、たくさんあります。
「立て直したいから、伴走してほしい」と言う日
ところが、ある時期から、同じ人の言葉が変わってくることがあります。「直してください」ではなく、「自分で立て直したい。だから、そばで伴走してほしい」。
言葉はよく似ています。でも、立っている場所が、まるで違います。前は、自分をあずけていました。今度は、自分が舵を握ったうえで、隣に詳しい人がいてほしい、と言っている。主役が、相手から自分へと移っているのです。
たとえるなら、自転車の後ろを誰かに押してもらって進む状態と、自分でこぎながら隣を並走してもらう状態の違いに近いかもしれません。どちらも前には進みます。けれど後者は、手を離されても、もう倒れません。
どちらが上、ではありません。順番です
ここで間違えてほしくないのは、「直してください」と言う段階が未熟で、「伴走してほしい」が成熟だ、という話ではないということです。
人には、自分をあずけきって休む時期が必要です。つらさの底にいるときは、無理に「自分でやります」と立とうとしなくていい。まず整えてもらって、力が戻ってきてから、ゆっくり舵を握り直せばいい。順番があるだけで、優劣はありません。医療の現場でも、人はこの二つの段階を行き来しながら、少しずつ自分の力を取り戻していきます。
暮らしの中にも、同じ段階がある
この段階の違いは、病院の中だけの話ではありません。
仕事で、誰かに全部お願いしたい日もあれば、やり方を教わって自分でやってみたい日もある。人間関係で、ただ聞いてほしい日もあれば、一緒に考えてほしい日もある。「やってもらう」から「自分でやる、ただし一人ではなく」へ。この移り変わりは、暮らしのあちこちで起きています。
大事なのは、今の自分がどちらの段階にいるのかを、自分で気づけることです。それが分かると、人に何を頼めばいいのかが、はっきりしてきます。
伴走者でありたい
株式会社ヤエコフは、医師・医学博士の視点から、心と体の土台づくりを伝えています。私たちが大切にしているのは、「直してあげる」ことではなく、あなたが自分で立て直していく、その隣を歩くことです。
整えてもらう日があっていい。そのうえで、自分の足で立ち直っていく。その移り変わりに、静かに伴走できる存在でありたいと思っています。